メトロポリタンの陰

出会った人とのフィクション、ノンフィクション

学校机の日々

 

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「今度市長選に出ることにしたよ」

 

何年かぶりのメールは短い文だった

政治の匂いがしなかった彼がどうして急にそうなったかはわからない

 

「立派だと思う。陰ながら応援するよ」

 

離れて暮らす僕には故郷の選挙権はない

それでも50を過ぎて人生を変えようとする彼に尊敬の念を抱く

そうありたいとも思う

 

選挙活動はSNSで情報を入手した

サラリーマンの仕事をやめて街頭に立っている

 

そのうちにバックに衆議院議員がついていることを知る

邪推が進む

 

 

彼は落選した

 

思ったより票は集まったけど

「今後のことはまだ考えてない」

メールはそれきりだった

 

中学、高校の同級生でずっと繋がっている数少ない友人だった

もう会えないかもしれない

その後のメールに返信もない、電話にも応答がない

そのまま年末になった

 

 

正月、年賀状の中に別の同級生の訃報があった

病の末にと書かれていた

去年の年賀状を読み返すと

「病気とともに共存します」とあった

 

 

歳をとることを痛感する

 

 

 

 

Fujifilm XT-2

Carl Zeiss C Biogon 21mm