メトロポリタンの陰

出会った人とのフィクション、ノンフィクション

四角い箱

 

 

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「病んでると思われるかもしれないけど、病んでないんだ」

駅から続く古い街の中にあるソープランド

窓のない部屋で彼女は1日を過ごす

働く理由を聞かないのが暗黙のルール

 

「外の天気は分からないんだよね」

大学にはほぼ行ってないという

客がつかない時はインスタとXで過ごす

Xへは仕事用なのに客への愚痴が時々書き込んでしまう

 

「友達が出来ないから大学には行かない」

一人暮らしで東京に友達がいないという

ひょっとしたら話ができるのは客だけかもしれない

 

「でもさここで話が出来るんだよね」

飲食店のウェートレスと違いここでは客が自分のことをチョコチョコと話す

それが数少ない会話なのだろうか

 

「やりたいことが見つからないよ」

小さな部屋で何か降ってくるのを待つ

ずっと待っている

 

「来月は隣の県で働くんだよ。楽しみ」

新人に人気が集まるので、遠征して新人として稼ぐ

今はweb中心のオタク客が多いらしい

 

「常連もいるんだよ。360分の人とか」

6時間もいる客がどんな人か想像もつかない

話を聞く限りデリケートなコミュニケーションが必要なようだ

 

かわいそうに思えるのこちらのおせっかい

でもそう思ってしまう

東京は罪作りの街だ