「こんな場所にきちゃダメだよ」 新入りの僕に隣で泳ぐ金魚が呟く 「来たばかりの君には申し訳ないけど」 彼はうずくまってそう嘆く 人生の半分以上をこの池で過ごしているという 大雨で流されてたどり着いたという 「もう出て行きたいんだ」 それから2ヶ月…

蟻の世界の台風は、僕らが通り過ぎた風かもしれない 蟻の世界の洪水は、僕らがこぼしたペットボトルの水かもしれない 蟻の世界の灼熱は、僕らがスイッチを入れたエアコンかもしれない 蟻の世界の戦争を終わらせるには,

長年勤めた会社を彼は辞めた 現役社員との飲み会では、説教がかった強い口調で話してしまう 「本当は嫌なんです。あういうの。」 戻れない場所はある 職場もそうだし 友人との日々の交歓や 彼女との楽しい時間も 戻れないなら 新しいことをするしかない けれ…

8月に入ると遠くから夏祭りの練習音が聞こえる 太鼓が鳴り笛がふかれる ベランダの風は涼しく 目を閉じればいくつかの思い出が浮かぶ 寝そべって本を読んでいると 階下から母の呼び声がする 「電話だよぉ。」 どんどんを階段を降りる 「もしもし？」 「あっ…

1週間前から体がだるく 咳がひどい ゆっくり休んだ今日の午後にようやく席は止まった 夏休みのプールの後のように体に疲労感がある そんな中、昨日は送別会だった 「いつもつい、責めるように話しちゃうんです」 帰り道に彼が呟く 志半ばで退職した彼は、現…